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【書評】宮本常一「海に生きる人びと」

宮本常一先生の「海に生きる人びと」を読了。もはや民俗学の枠を軽く飛び越え、「生活史学」「民衆生活学」とでも呼ぶべき域に達している。

瀬戸内海周辺をメインとした海人(アマ)の歴史について微に入り細に入りよくもまあ調べたものだと関心する。藻塩を焼くという事業、家船(えぶね)の発展とその推移、水主(かこ)として領主に徴用されたり、商業船へと転じていく過程。流浪の民である海人がいかにして定住するようになったか。朝鮮との密接な関係。倭寇。

こういったことが淡々と述べられている様はまさに学者の文章と言った趣で、「忘れられた日本人」のエッセイ感とは一線を画している。

稲作農耕民を「常民」として、その他を軽視した柳田民俗学では達し得なかったもうひとつの日本の民衆史がここにある。民俗学は定住民のみで語られるものではなく、ダイナミックな移動を伴った海民を無視しては通れないものだとわかった。

電子書籍もあるので気になっている方は是非お手にとっていただきたい一書である。

 

海に生きる人びと (河出文庫)

海に生きる人びと (河出文庫)

  • 作者: 宮本常一
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2015/07/04
  • メディア: 文庫