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北海道胆振東部地震体験記・北海道七飯町にて1

9月6日の午前3時7分、おれは寝もせずにまだ起きていた。函館の工場で世を忍ぶ仮の仕事をしているおれは4勤が終わったあとの2休の二日目で、次は夜勤だった。パソコンデスク前の椅子に座りながらDTMをしていたか小説を書いていたかエロ画像収集に励んでいたかは忘れた。

すると突然モバイル端末が例のけたたましい音とともに緊急地震速報を告げてきた。スマホとタブレットのダブル攻めである。

「地震が来ます。ご注意下さい……地震が来ます。ご注意ください」

これを聞くとおれはいつも子供の頃に持っていたドラえもんの目覚まし時計を思い出す。

「ピュー! ピュー! おはようございます、ぼくドラえもんです」ピューピューというのはそうとしか聞こえないサイレンのような音だ。

ほどなくして窓が揺れるがたがたという激しめの音が鳴った。揺れ自体は大したことはなかったが音が派手だったので地震慣れしていないこともあって恐怖感があった。

揺れは程なく収まった。大したことはなかった。と思ったが、ここが震源地に近いとは限らない。もっと震度の大きかった地域があるかもしれない。そう思ってググり、地震速報を見た。北海道の真ん中よりやや南西より、かつて訪れたことのある白老のあるあたりに恐ろしい数字がひしめき合っており、6+というのも見えた(恥ずかしながらおれはこのときこの一帯を胆振と呼ぶことを知らなかった。北海道は広い。概してそんなものである)。おれの住んでいる道南ちほーは震度5になっていたが、家のある地域の地盤が強いのか体感上2~3くらいだったと思う。

次第にTwitterにも各種情報が集まってくる中、地震発生から10数分後の3時25分ごろに停電が来た。

なんの前触れもなく訪れる圧倒的な暗闇。闇以外にはなにもない。スマホの画面が照らし出す空間だけがほのかに浮かび上がる。災害の少ない地方ということもあって防災グッズの類いは用意していなかった。

台風等でこれまでにも停電は経験してきたがいずれもすぐに復旧したので今回もそうなるだろうとたかをくくっていた。このときは被害の大きさを伝える情報はなにも入ってきていなかった。

だが待てど暮らせど電気はつかない。スマホを切ってみると完全な闇に包まれてしまう。その完全さは暴力的ですらあり、あらゆる人権というものを否定しているかのようだった。3時50分くらいになると北海道全域で停電という情報が入り、匿名掲示板のまちBBSでも胆振地方はもとより札幌や江別、道東など幅広い地域の住人が停電を訴えていた。ここにきて事態の深刻さがようやく実感される。

とにかく暗闇というものは人を不安にさせるものだ。古代人にとって夜はそれ自体が恐怖の対象だったであろうと思った。4時半ごろになって外が白み始めると、地獄で蜘蛛の糸を垂らされたような救われた気持ちになったものである。光がこんなにもありがたいものだったのかと思った。窓から外を見てみると電線に大量のツバメが留まっているのが見えた。雀ではなしにこんなにたくさんのツバメを見るのは初めてだったので地震の影響か? と思ったが関係ないようだった。

この頃の自分のツイートを見ると「外明るくなってきた……なんかもう寝る気にならない」と言っている。基本的に豆腐メンタルなのだ。

 

停電の復旧見込み無しだの厚真町のあの鬼の爪痕のようなおぞましい土砂崩れの光景なだのと憂鬱な情報ばかりが入ってくる中で家族と昼食をとった。電気はないがガス台は使えるのでいつもと変わらない食事が供された。

この日の北海道は暑かったので昼食後はエアコンを効かせた車の中で過ごした。ラジオをつけるとローカル局は当然この地震一色である。スマホの充電は車のシガーソケットで出来る。だがガソリンスタンドはやっているのだろうか。見回ってみたい気持ちはあったが信号機がついていない中運転するのは怖いので歩いて町内の様子を見て回ることにした。

国道5号線まで出ると、信号機はついていない、警察も立っていないのに皆普通に運転していた。ツルハドラッグに長蛇の列が出来ていた。セブンイレブンに行ってみるとエアコンはついていない、照明はついていない、放送もかかっていないという状態であったが営業はしていた。店内は客でごった返しており、スマホ充電器は売り切れていた。

食料品や水も全滅だった。また買い占めかと思い、人間の業の深さにつくづく嫌気がさした。

近くにあるガソリンスタンドは休業していた。

さらにそこから離れていないところに何故かもう一軒あるツルハドラッグにも長蛇の列が出来ていた。

エネオスは営業していたが順番待ちの車が車道に果てしなく、終わりが見えないくらいに並んでいた。後ろの方はそれがガソスタの順番待ちだとは知らずに、普通に渋滞だと思って並んでいる者もいるかも知れない。警察はなにをやっているんだと思った。

もう一軒のセブンにも行ったが状況は同じだった。従業員も自分の生活や家族が心配だろうに押し寄せる客を相手に仕事をしていて頭が上がらなかった。

これら小売店では端末型の簡易レジ、ハンディPOSレジというらしいが、それの充電があるから営業出来るのだという。逆に言えばそれの充電がなくなれば営業できないと言うことではないか。

家に帰る途中に雨に降られ、営業していない七飯駅の軒を借りて雨宿りしてから帰宅した。やはり車の中でスマホを充電しながら過ごした。続々と情報が入ってくる。今回やられた苫東厚真火力発電所というのが道内の電力需要の40%だかをまかなっているらしく、復旧までに最低1週間はかかると言っていた。厚真町では震度6強ではなく震度7の可能性がある。世耕だかツルセコだかいう大臣が北電に苫東厚真火力発電所を1週間以内に復旧せよと指示したと自慢げに言っていた。お大臣様に指示されるまでもなく現場の人たちは全力で復旧作業に当たっているだろう。仕事してますアピールのために上から目線で物を言う如何にも政治屋らしい政治屋だと思った。

札幌の清田区の道路が崩壊し、液状化し、建物が傾いている画像がTwitterに上がっていた。札幌は震源地とは離れているのだが、地盤の弱さでこうまでなるのかと思った。しばらくしてからガソリンを求めて車を走らせた。信号機はついていなかったがなんとかなるものだった。

近所にあるスーパーアークスは店内での業務が出来ずに軒先に商品を並べて販売していた。もちろんここも長蛇の列である。

大中山の方にある出光は目の前で終了してしまい、ホクレンは営業していなかった。

そんな中での大谷翔平選手の快挙とも言えるめざましい活躍ぶりが嬉しかった。

夕方ぐらいに、連絡があるまで自宅待機と職場から連絡があった。

家に帰り、薄暗くなってくるとまたしても不安が募る。夜がこんなにも恐ろしいものだとは思わなかった。食卓にローソクを立て、ラジオを聞きながら夕食をとった。当然風呂には入れなかった。

小売店はどこも頑張っていたがわけても我が北海道の雄、セコマことセイコーマートの奮闘ぶりが頼もしかった。

 

セコマではホットシェフと言って店内で調理しできたての弁当や唐揚げなどを提供している。他のコンビニではおにぎりなど消えてしまっている中で、その場で飯を炊いて出してくれていたのだ。

明かりが無く外も真っ暗だと星がとても綺麗だった。

当然Wi-Fiにつながらないのでスマホ回線で通信していたのだが、それもつながりにくくなってきた。

 

電気もなくスマホの充電も無駄に出来ないとなるとなにもできず、早めに寝た。

だが21時半ごろになって父親に起こされた。電気が復旧したのだ。久しぶりに見る蛍光灯の明かりがまぶしかった。実際には一日もないくらいの時間だったが、たったそれだけ電気がないだけで人は右往左往し、なにもできなくなってしまう。 再び戻ってきた光りのなんとありがたかったことか。

 

 

回線が不安定なので二回ツイートしてしまっている。

しかし依然として停電中のところは多く、隣の函館もまだというところがあった。

こんな具合でこの日は終わった。

 

本当は二日目以降も書こうかと思っていましたが、諸事情あってこれで終わりです。

今なお断水、停電の憂き目に合われている地域があり、多くの貴い命が犠牲となりました。

一刻も早い元の生活への復帰を祈ります。